富士宮は子育てしやすいってホント?

2026.02.06 公開

私が富士宮にUターンして子育てをしようかと考えていた2016年。富士宮に住む先輩ママたちが口々に言っていたのが「富士宮は子育てがしやすい」ということでした。

私は富士宮で生まれ育ちましたが、それまで「富士宮は子育てがしやすい」なんて考えたこともありませんでした。しかも、ペーパードライバーなこともあって、車社会である富士宮は個人的には不便なまちだとすら思っていたほどです。

なぜ、富士宮で子育てをしているお母さんたちは口々に「富士宮は子育てがしやすい」と言うのでしょうか。

岳南朝日新聞社で35年にわたって記者をしていた千頭和真理(ちずわ・まり)さんに、富士宮の子育てをめぐる環境の変化をうかがい、富士宮はなぜ子育てしやすいまちだと言われるようになったのか、富士宮の子育てのしやすさはどこにあるのかを考えてみることにしました。

元岳南朝日新聞記者の千頭和真理さん

子どもがのびのびと遊べる環境

富士宮について、お母さんたちの口からよく聞くのは「自然が身近にあり、子どもたちがのびのびと遊べる環境がある」ということです。

富士宮が自然環境に恵まれているのはもちろん、公園の設備がいかに充実しているかについては、これまでのハハラッチの記事でも紹介してきました。

山や川などの大自然の中で子どもと遊ぶ場合、地元で生まれ育った人であれば、どこにどんなスポットがあるのかを把握しています。しかし、市外から転入してきたインドア派のお母さんであれば、なじみのない自然の中で子どもを自由に遊ばせるというのは、なかなかハードルが高いかもしれません。

そんなとき、駐車場が十分にあって、子連れでも使いやすいお手洗いがあって、さらに安全に楽しめる遊具が備わっている公園があったとしたら、親としてどんなにありがたいことでしょう。

千頭和さんによると、富士宮市の公園の整備は、もともと1人のお母さんが市長宛に手紙を書いたことから始まったのだそう。

「私が子どもだった30〜40年前には、公園も今ほど遊具が充実していなかったし、子どもたちは近所の川で勝手に遊ぶというのが当たり前でした。それが変わったきっかけは、市外から転入してきたお母さんが市長宛に書いた手紙だったんです」

近年、市内の主な公園ではトイレなどのバリアフリー化が進んだほか、老朽化した遊具が安心して遊べるものに改築されています。最近では、外神東公園に県内最大級の遊具が設置されたことも話題になりました。

外神東公園の大型遊具

このような富士宮市の施策は親としてありがたいかぎりなのですが、公園の整備をしようとするとき、先立つものはお金です。そういえば、富士宮の財政状況は大丈夫なのでしょうか。

富士宮が新たな事業に次々と挑戦できるのはなぜ?

千頭和さんは記者として市政を取材してきた経験から、富士宮の懐事情についても教えてくれました。

「富士宮市も2000年代半ばまでは財政難に頭を悩ませていた時代がありました。それが好転するきっかけとなったのが、2008年度に創設された『ふるさと納税制度』です。ふるさと納税の返礼品としてトイレットペーパーなどの日用品を設定したのが好評で、多くの寄付が集まって市の財政が潤うことなりました。これによって、子育てに限らず、市民の暮らしをよりよくするための事業を積極的に行えるようになったんです」

静岡県富士宮市ふるさと納税特設サイト「富士山といっしょ

国内では財政難に苦しむ自治体もある中、富士宮には市民の生活をよりよくするために使えるお金が潤沢にあると聞くと、まちの未来に希望が持てます。

「ふじのみやハハラッチ」も富士宮市の事業として立ち上がり、10年にわたって地元の情報を発信してきました。その背景には、私からの財政的なバックアップもさることながら、事業を運営している「人」の存在が欠かせません。

この「人」というのも、富士宮での子育てのしやすさを語る上でよく出てくるキーワードのひとつです。

先輩ママの「あったらいいな」が新米ママを救う

実は、私自身も富士宮の「人」の力に救われたうちの一人です。

産後はどうしても「ママと赤ちゃん」という閉じた関係性の中で長い時間を過ごすことになりがち。それはそれで幸せな時間なのですが、不意に社会とのつながりが一気に消えてしまったような気分になって、急に不安に襲われたことがありました。

そんなときに、改めて社会とつながるきっかけのひとつとなったのが、「ふじのみやハハラッチ」でした。子どもを介した「○○ちゃんのママ」としての付き合いではなく、自分の好きな「文章を書くこと」を介し、「ハハラッチライターのふーみん」として受け入れてもらったとき、どれだけ心が軽くなったことか……。

ハハラッチは仕事のつながりでもなく、子どもを介したつながりでもない。出産前の自分のキャリアを尊重してもらえて、そこで培ったスキルを活かして社会の役に立てる場でした。しかも、子育ての先輩がたくさんいるので、子育ての悩みも相談できたのです。

この「ふじのみやハハラッチ」の運営を担っているのが、NPO法人母力向上委員会。母力向上委員会は子育て経験のある女性が主体となって、当事者目線で妊娠・出産から子育て中のお母さんたちをサポートする団体で、ハハラッチのほかにも、妊婦さんやママ向けの講座・イベントの開催や、子育てにやさしいコンビニ・店舗・施設を「​ベビ*ステ」として登録するベビ*ステ事業などを行っています。

母力向上委員会のホームページより

先輩ママたちの抱いた「あったらいいな」というアイデアが、どんどんカタチになっていき、次に続くママたちの子育てを幸せにしていく。富士宮にはそんな素敵な連鎖が生まれており、きっとこれからも続いていくことでしょう。

千頭和さんは新聞記者として、そんな富士宮のお母さんたちの姿を見つめてきました。

「私が新聞記者になった1991(平成3)年当時、世の中のお母さんたちの多くは専業主婦で、働いている人もパートでの勤務がほとんどでした。岳南朝日でも、バリバリ働いている女性は独身ばかりという時代。一方、地域で活動するお母さんたちは婦人会という組織で、住みやすい地域づくりのほか、女性の地位向上を目指していました。

その後、女性の社会進出が進んで2010年前後になると、富士宮でも女性が社会の中で気兼ねなく声を上げられるようになっていきます。お母さんたちが主体となって新たな取り組みをする人たちが出てくるようになりました。2008年に創立された母力向上委員会もそうですよね。

今まで、取材を通して面白い活動をしているお母さんたちにたくさん出会ってきました。市はもっとお母さんたちの力を活かしたらいいのにと思います」

ハハラッチでも、これまでに富士宮で活躍するお母さんたちを数多く紹介してきました。

子育てをしながら自分らしく活動しているお母さんたちの力が、今よりもっと市政に活かされるようになったとしたら……。富士宮はより住みやすく、子育てがしやすいまちになっていくのではないでしょうか。

子育てもキャリアも私らしく

千頭和さんにお話をうかがっていると、富士宮のお母さんたちがそれぞれの時代ごとに、子育てや地域のためにエネルギーを注いできたことを感じます。近頃では子育てをしながら管理職としてキャリアを積み、社会に貢献しているお母さんも珍しくはありません。

ハハラッチのライターとして市の職員の方と接する中で印象的だったのは、市役所で女性の管理職が何人も活躍しているということ。雑談をしていると、子育てのことで盛り上がることもしばしばありました。

千頭和さんによると、富士宮市役所では2010年代から女性が管理職として活躍できるようにするための動きが始まっていたのだといいます。

「当時の芦澤副市長が課題だと語っていたのが『女性職員は管理職として活躍するための教育を受ける機会がほとんどない』ということでした。

富士宮市はこのタイミングでいち早く女性職員も管理職研修が受けられる体制を整えたので、市役所で女性の課長が何人も活躍している今につながっているのだと考えられます。

そうやって市役所が率先して女性の活躍を推進したことは、市内の企業にも少なからず影響を与えたと思います」

全国的に見れば、富士宮市で活躍する女性管理職の割合はまだまだ少ないかもしれません。しかし、民間企業である岳南朝日新聞社で編集長という管理職のポストを務めていた千頭和さんは、女性が上に立つ難しさを感じながらも、次の世代への希望を見出しています。

「富士宮でも、社会で働く女性が『強い女』として武装する必要がなくなり、性別に関係なくそのままの自分で活躍できる時代が、もうすぐそこまで来ているんじゃないかな」

子どもと時間を共有しながら子育てができるまち

女性が社会の中で活躍の場を広げてきたとはいえ、まだまだ過渡期。子育てをしながら働くには大変なことも少なくありません。ときには、仕事の時間が迫っているのに、子どもの支度が終わらなくてイライラしてしまったなどといった経験のある方もいるのではないでしょうか。

子ども向けの作文教室の講師を務め、富士宮の親子と接することもある千頭和さんは、ご自身の子ども時代を振り返って、大切にしている原体験を教えてくれました。

「幼い頃、父が本の読み聞かせをしてくれたことがずっと私の心にあって、本を読んでくれた父の声を今でも思い出せます。

親が自分のために時間を使ってくれたという経験は、何物にも代えがたい大切なもの。働きながら子育てをするのが当たり前になって、時間に追われて読み聞かせをする余裕がないという話を聞くこともありますが、読み聞かせに限らず、ぜひ子どものために時間を使うことを大切にしてほしいと思います」

社会生活を営む上では、どうしても時間に追われてしまう場面もあります。

それでも、1歳児が道端に座り込んで虫を観察していたら、通りかかった小学生が虫の名前を教えてくれたり、2歳児が階段を一歩一歩下りていたら、居合わせた人たちが急かすことなく応援してくれたり。

地域の人たちに見守られながら、ゆったりとした時間の中で子育てができる富士宮は、私にとって間違いなく「子育てのしやすいまち」です。

子育てに行き詰まったとき、そっと寄り添ってくれる人がいる富士宮。
子育ても仕事も、工夫次第で自分らしく楽しめる富士宮。
ゆったりとした時間と自然豊かな空間で子育てができる富士宮。

今なら、先輩ママたちが「富士宮は子育てがしやすい」と話してくれた気持ちがよくわかります。

私は子どもを産むまで、「富士宮には富士山以外、何もない」と思っていました。当時の私に教えてあげたいのは、“何もない”のではなくて、“何も見えていなかった”だけなのだということです。

富士宮での子育てを経て、今、私は富士宮のことを、心から誇りに思っています。

ハハラッチライター

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ふーみん

ヨガインストラクターだけど夜ふかし大好き♡ 富士宮市出身。1児の母。奈良、横浜を経て、出産を機に富士宮に戻ってきました。季節の移ろいに合わせて身体をつくる「こよみヨガ」のインストラクターとしても活動中。四季折々の富士宮の魅力を発信していきます。

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